有限会社スプラウト・ジャパン

(菓子製造販売)
所在地 東京都杉並区松庵2-6-32
代表者 三谷 聖一
資本金 1000万円
従業員数 8名
設立年 2005年
企業HP https://macaron-et-chocolat.jp/

---(2023年9月掲載)-------------------------

看板商品の付加価値をアピールし価格転嫁

看板商品のマカロン

有限会社スプラウトジャパンは、西荻窪駅でオリジナルマカロン専門店「MACARON ET CHOCOLAT」やECサイトにて焼き菓子などを販売している。店内には、色とりどりのマカロンやケーキがショーケースに綺麗に並べられ、壁ぎわには手にとりたくなるようなさまざまなオリジナルの焼き菓子が陳列されている。

昨年(2022年)は、物価高騰により、原材料である卵や砂糖の値上げに加えて包装資材の値上げの影響が直撃した。また、光熱費の高騰による店舗維持費もかさんだことにより、商品価格を改定せざるをえなくなった。

「段ボールなどをはじめとした紙製品の値上げ幅が大きく、原価率を押し上げています。できるだけ発注ロットを大きくして原価を抑える努力はしていますが、全てを吸収しきれるわけではありません」と取締役の山口氏は言う。昨年、一部商品を値上げし、今年に入ってから段階的に全商品の値上げに踏み切った。「売上が前年比横ばいでも、原価も光熱費もここまで高騰してしまうと利益が大きく減少します。原価の値上げを商品価格に転嫁せずに全てを吸収しようとすると、人件費までをも抑えることになりかねない。そうすると企業の体力が失われ、会社の発展を妨げることになってしまいます」と嘆く。

ただ、同社は原料の値上げを理由に単純に商品価格を改定したわけではない。「商品の付加価値をしっかりアピールすることでお客様にもご納得いただいた」と山口氏は言う。看板商品であるマカロンをはじめ、手がけるスイーツは一つ一つ丁寧に手作りにこだわり、日本人の味覚に合うよう研究を重ね、甘さを控えめにしたり、しっとりした食感に仕上げたりと、他店にはないオリジナリティをアピールした。店頭には季節ごとに変わる10種類以上のマカロンを並べ、常連のお客様にも飽きがこないように工夫している。

お店に来店するお客様だけではない。卸し先にも丁寧に説明をし、商品の価値を認めてもらうことでスムーズに値上げをすることができたのだという。

働き方改革で人材を重視する

店内の作業風景

昨今の人手不足や最低賃金の上昇について同社に質問すると、「手作業のクオリティは落としたくないので、人材は重視している。夏休みも含めた休暇をしっかり取得できるようにし、必ず半期に1回は全員と面談し、良い点や課題を従業員と一緒に考えます。そうすることで皆さんが長く働き続けやすい環境づくりが出来ているのかなと思います」と山口氏は言う。一般的に、町のケーキ屋などの小規模な菓子製造業界は、仕込み作業のための早朝出勤や深夜まで働くことが多く、離職率が高いが、その中でも同社は働き方改革を積極的に推進し、長時間労働を少なくし現在は時短勤務スタッフ2名の雇用も維持している。

「女性が育児中であっても仕事を続けることが出来るよう企業も取組まないと社会は発展しません。社会的責任として、みんなで協力しあえる環境を整備しています。そのおかげか、当社の従業員は殆どが5年以上働いてくれています。マカロンは機械化することができない、とても繊細なお菓子なので温度変化に敏感で細かいデザインも人の手によるものでしか作ることができない。だからこそ人材は大切にしたい」とういうことだ。

事務所でできる業務の場合には子連れ勤務も可能とし、子どもを別部屋で遊ばせながら仕事をすることもあるという。

試行錯誤のお店づくりと今後の展望

同社は成功しているようにみえるが、失敗談もある。「失敗したことは今までたくさんありますよ。一例を挙げると、生菓子であるケーキの販売を重視し、新作や日替わりの商品をたくさん出したこともありました。ただ、結局は販売額が大きかったのは看板商品のマカロンで、生菓子の売れ行きはあまり伸びませんでした。」と山口氏は答えた。

店内のレイアウト、展示する個数や順番でもお客様からの見え方は大きく異なるという。「ディスプレイやパッケージのデザイン一つとっても売れ行きに大きく影響します。いまだに正解は分かりませんが、試行錯誤しながら工夫しています」という。

今後の展望については、「包装資材の高騰はありますが、それでも当社は脱プラに取り組んで、プラスチック商品は出来る限り使わないようにする試みをしています」と山口氏。 “もったいない精神”から生まれた同社の「マカロンボーロ」の原点を改めて振り返った。

「正直、紙製品よりもプラスチックを使用した方が原価を安く抑えることはできます。ただ、少しでもSDGsに配慮した商品を提供することが当社のこだわりの一つでもあります。秋以降はほとんどの商品の包装資材をプラスチックから紙にすることを目指したいと考えています」と語る。また、食品ロスの削減に向けて、材料や販売数の調整、イベント時の予約受付なども活用しているそうだ。

店頭に綺麗に並ぶ商品

「当社の商品のクオリティを維持していくための人材教育も大事ですし、商品の価値を取引先や多くのお客様に知っていただきたいと思っています」と山口氏は笑顔で語った。

---(2023年3月掲載)-------------------------

もったいない精神から生まれた「マカロンボーロ」

もったいない精神から生まれた「マカロンボーロ」

マカロンボーロ

  2012年よりマカロンとチョコの専門店を開業した同社は、ギフトや手土産需要が大半であった。

しかし、マカロンを作る過程で余ってしまう外側の生地を利用して食品ロスを減らすことができないか、と考え生まれた商品が『マカロンボーロ』だった。

マカロンの生地に様々な味をつけてガラスの容器にいれたことで、写真映えする、と話題を呼び、雑誌「婦人画報」のECサイトで取り上げられたことがきっかけで一躍人気商品となった。

 

徹底したSEO対策で売り上げアップ

徹底的したSEO対策で売り上げアップ

西荻窪本店

販路拡大、ブランドの認知力向上のため、2019年にECサイトを立ち上げたが、その後、他社と提携してHPの分析を徹底的に実施した。

すると、当初は主力ではなかった「オリジナルマカロン」という検索ワードでのHP来訪率が多いことに気付き、お客様の要望に合わせて個別に製作するマカロンの訴求を始めた。

すると、法人からの問い合わせが増加し、ノベルティやコラボグッズとしてマカロンが売れるようになった。

マカロンに特化して、お客様のニーズにとことん合わせる

マカロンに特化して、お客様のニーズにとことん合わせる

お店には色とりどりのマカロンが並ぶ

同社のこだわりポイントは「お客様のニーズにとことん合わせる」ことだ。お客様とのやりとりを定型化せず、丁寧にやりとりを重ねて希望の形のものに近づけることができるのは同社の強みである。

当初は多店舗展開し、販路を広げて売り上げを増やしてきたが、手作りでオリジナル商品を作れることに注力しようと取引先を絞ってお客様ニーズにしっかりと応える方向性に転換した。

「これからはオリジナルマカロンもマカロンボーロも素材を含めてもっと極めていきたい」と取締役の山口氏は語る。

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