2024年1月22日

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株式会社 Kapinon studio

(ウェブサイト、イラストレーション、映像等の企画及び制作等)
所在地 神奈川県相模原市緑区大山町
代表者 山田恵美
資本金 20万円
従業員数 2名
設立年 2017年
企業HP https://kapinon.com/

事業の拡充により外貨マーケットを開拓

画像素材のサンプル。細部にこだわって作成している。

株式会社Kapinon studioは、企業のホームページ企画や写真・動画の撮影、イラストレーションの制作など多岐にわたる事業を運営する総合動画制作スタジオだ。「喜んでもらうものを創り続ける」を会社理念に、お客様の要望と真摯に向き合い、丁寧にホームページやイラスト、動画やデザインを制作している。

2014年に社長の山田恵美氏が個人事業主として開業し、その後事業が軌道にのると、夫の健司氏も加わり、二人三脚で会社を成長させてきた。現在は主に、HPの制作等を中心とするWEB部門と動画制作等を中心とする撮影部門に事業が二分化しており、売り上げも半々程度だという。夫婦で業務を分担して事業を展開し、撮影業務は一緒に行動し出張撮影をしている。

2020年、コロナ禍で対面での撮影が激減したことをきっかけに、既存事業を見つめなおした。その際に、本格的に事業として注力し始めたのが、海外の「ストックフォトサービス」(※)だった。コロナ禍前も同事業を開始はしていたものの、安定した収益にはつながっていなかった。

「画像素材の提供は、少ない単位では売上額が小さいため事業として成立しません。沢山の素材を作成しなければならず、労力がかかるのでなかなか事業として取り組むことが難しいんです」と社長の恵美氏は話す。「本格的な参入が難しい分、WEB関連会社としてはメジャーなサービスではないのですが、このサービスは、上場企業のような大企業から中小零細企業まで、多種多様な企業が利用しています。例えばWEBサイトの制作においても、イメージ画像などをいれたい場合に役に立ちます。多くの素材を提供すればするほど、様々な会社に利用していただくことができるので、売り上げにもつながります」と健司氏も言う。

為替リスクの分散も、当サービスの事業に注力した理由の一つだ。恵美氏は、「ストックフォトサービス自体は日本のプラットフォームのものもあるのですが、海外のサービスを利用した事業に乗り出すことで、売り上げを米ドルで享受することができることが利点でした。為替が円安の時期だったので、為替差益を得ることができましたし、結果として、外貨マーケットの開拓につながりました」と話す。

(※)ストックフォトサービス…写真やイラスト等の画像素材を作成し提供するサービス。利用者はその中から画像を有料で購入し、広告やWEBサイトなどのメディアに利用することができる。

女性経営者ならではの高付加価値サービスの提供

社長の恵美氏(右)と夫の健司氏(左)。二人で協力して事業を築いてきた。

2023年、コロナ禍以来中止となっていた学校行事等の開催が徐々に再開し、撮影の依頼が増え始めた。コロナ禍で、撮影一本でやっていたカメラマンが職を失ったり、高齢のカメラマンは引退したりしたことで、学校側も依頼できるカメラマンが減ったこともあり、以前にも増して撮影の依頼があったという。さらに、「企業向けの撮影においては、女性カメラマンはすごく少ないんです」と恵美氏。BtoCの撮影(七五三等における家族写真等)は女性カメラマンも多い中で、BtoBの撮影は拘束時間が長く体力面でも負担があり、ライフステージに合わせた働き方が難しい、という現状がある。恵美氏は、「重い機材を持ち歩き、動き回る子どもたちを追いかけながら撮影や編集することは体力的にかなりハードです。ただ当社においては、子育ても仕事も夫婦で業務分担をし、支えあってやっているのでうまく回せています」と言う。「しかも、女性カメラマンは実は企業側にとってもメリットがあります。子どもは女性の方が警戒しないという傾向があるからです。特にお母さんカメラマンは、お子さんがいるので遊び慣れています。ご家庭の方がどのような子どもの写真を求めているのかもよく理解しているのと、ごく自然な雰囲気の中で子どもたちの笑顔を引き出すことができるのだと思います」とのことである。

また、会社HPやSNSを通じて、積極的に“顔出し”をしているという。「取引先に顔を見せることで安心して依頼してもらっていると思います。最近は撮影や動画制作をする会社が増えていて供給が増加している状態ですが、そうするといわゆる“価格競争”が起こってしまいます。当社は同業者の料金を参照しながらも、お客様との信頼関係の構築に重きをおき、安価で低品質のサービスには傾かないようにしています。本当に些細なことですけど、細かいミスをしないよう心掛けることでもお客様に安心して取引していただくことができます。こうして丁寧に着実に小さいことを積み重ねて信頼関係を築いています」と恵美氏は語る。

ただし、商品の品質を保つためには、2年程度の頻度で機材の入れ替えを行う必要がある。機材は海外製品も多く、円安の影響も響いている。「日本製のカメラでも部品は外国製のものも多く、かなり為替や原料高が影響しています。トータルでは、設備投資で1割程度は費用が嵩んでいますが、まだ商品価格に転嫁できていません」と健司氏。今後の、価格転嫁が課題となっている。

独自のサービスを展開し、リピート率は90%以上に

撮影風景。「楽しみながら創りつづけること」を意識して笑顔で現場にあたる。

HP制作において、同社は固定費を請求せずサーバーの名義もお客様名義にしている、という。「一般的には制作会社がサーバーを保有し、サーバー保管料や更新料などを請求することが多いのですが、私たちは初回限りの料金でサービスを提供することで、お客様である会社の方が自らHPを更新しサイトを継続できることを目指しています」と恵美氏。顧客との関係は制作時の1回限りで完結するというのに、リピート率は90%以上だという。「HP以外にもWEB部門や撮影のニーズがでたときに“とりあえずKapinonに相談してみよう”と思い浮かべてもらえているのではないでしょうか。継続して料金がかかるわけではないからこそ、お試し感覚で利用してもらえ、そこから相談しやすい関係を築けています」と健司氏は話す。

同社においては、営業はしていない。恵美氏は「現状は夫婦二人でやっているので、営業にまで手が回っていないということがありますが、外部に営業を委託することも可能だとは思っています。ただ、当社のサービスのことやお客様のことをよく理解していないと、営業はできないと考えているため、まずは目の前にいるお客様との関係を大切にし、会社理念の“喜んでもらうものを創り続ける”を心にとめ実績を積み上げていきたいです」と笑顔で話す。健司氏も「特にコロナ禍以降、お客様との深いつながりができていると思います。お客様の気持ちを汲んで寄り添う制作を考え、関係者を大事にすすめてきました。だからこそ、新規のお客様もご紹介で取引につながることが多いです」と付け加えた。

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