2023年10月20日

株式会社トライフル

(外国語対応人材の派遣・紹介)
所在地 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX13F
代表者 久野 華子
資本金 500万円
従業員数 8名
設立年 2017年
企業HP https://tryfull.tokyo/

語学力の強みを生かした高度人材の活躍を推進

久野社長

株式会社トライフルは、展示会などの単発イベントにおける外国語対応人材の紹介、派遣事業を展開している企業である。約3,000名のキャスト(外国語対応スタッフ)が登録しており、登録者の約半数は日本人で、その他は各国の外国籍の人である。対応できる言語は、英語、中国語をはじめ、韓国語、スペイン語、インドネシア語、ベトナム語など多岐に渡る。クライアントは国際会議、企業向けの展示会や海外企業が日本に出展をする際に派遣を申し入れるが、同社は再委託をしないワンストップサービスであるため、紹介する人材と密にコンタクトをとり、クライアントに適した人材を紹介、きめ細かな対応が好評だ。

起業前はイベントの派遣スタッフとして勤務していたという社長の久野氏は、「イベント派遣の仕事はたくさんありますが、外国語対応できる人材が極端に少ないことに課題を感じていました。例えば、英語での対応が必要なイベントに派遣できるキャストを探すために、あらゆる派遣会社から急遽人材を寄せ集めて対応することがありました。そうすると、キャスト間で語学力に差がでてしまったり、同時通訳レベルのことを求められているにも関わらず、外国語対応をしない他のキャストと同じ給料しか支払われなかったりすることもありました。きちんと能力の高い人材に対しては、その能力に適した時給が支払われるようにしたいと思いました」と言う。キャストの登録に際しては、大学などの教育機関と連携し紹介をうけることも多いそうだ。「一度仕事を離れた主婦や外国人留学生は、職に就く際に強みを活かし切れていないように思います。もっと“語学力”という強みを活かして仕事をすることができたら、高時給で働くことができるはずです。より自分自身の能力によって評価される仕事を提供したいと思っています」と久野氏は強く語る。

 

海外クライアントの誘致で売り上げ増加、適正な人件費に転嫁

イベント時の様子

コロナ禍ではイベント自体の開催がなく、訪日外国人もいなかったため、売り上げが激減したが、202210月から入国規制が緩和されたことにより、徐々にインバウンドを中心に回復してきた。さらに、今年に入ってからは大きな展示会の開催も増え、海外企業の日本での出展が増えたことで、同社のキャストを派遣する機会も増えたそうだ。「海外のクライアントは、円安の今、来日するとお得感があるので、コロナ前と比較すると増加傾向にあります」と久野氏。

同社は、海外企業向けにはサービス代金の金額をドル建てで表記しているため、円安になることで自動的に為替差益をうけることができる。久野氏によると、「今は、国内市場に注力するよりも海外の顧客開拓へとシフトしています。円安の今はドル建て決済の海外クライアントを誘客した方が、円換算で多くの売り上げを得ることができます。」ということだ。

創業当初と比べると人件費も高騰した。「コロナの影響でイベント業界全体の人材不足が深刻化している今、これまで地方と都市部の人件費を差別化していましたが、地方における派遣の際も都市部と同水準まであげなければ、よい人材が集まらなくなってしまいました。ただ、クライアントも高い能力の人材を希望するため、価格転嫁にも納得していただいています。」と久野氏は言う。同社は業界内でもトップレベルの給与水準だ。「形が見えないサービスを売っているからこそ、優秀な人材を集めることが大事です。よい人材が集まれば、クライアントにとっても有益ですし、適正な対価を支払い、キャストにとっても居心地のよい場所を作ることを大事にしてきました。」と強調した。働くキャストは主に20代から30代が中心だが、70代のキャリアを積んだベテランキャストもいる。家族全員で登録しているケースも多いという。

業界全体のDX化を通して生産性向上を目指す

アプリ開発のミーティング風景

現在同社では、デジタル活用に注力している。3年ほど前から人材派遣のための独自のアプリ開発を始めているが、当初は外注により作成したため、実務に即したサービスを作ることができなかった。そこで、社内でCTO(※1)を任命し、実務をよく知るスタッフがアプリの開発に中心的に携わることにより、現場に浸透するようなサービスが徐々にできてきた。

久野氏は「イベント業界の経営者も高齢化しており、業務において紙を使ったアナログなやり方が通例でした。非効率な作業が多く、システム化されないことにも課題を感じていました」と振り返る。「外国語対応に特化した人材派遣という特殊性があり、競合他社というような会社は他にいないからこそ、業界全体の課題にも踏み込んで、DX化を推進していきたいと考えています」と語る。業界特化型のアプリは年内には社内実装し、来春からクライアントなどの企業にもサービス展開していく予定である。

今後の展望について久野氏は、「単発での派遣は今まで良いイメージがありませんでした。イベント会社とキャストとのトラブルも耳にすることが多かったです。最近では、マッチングの場のみを提供する事業会社も増えてきていますが、大事なことは提供するサービスのクオリティを維持することだと考えています。だから、あえて私たちは従来型の人材紹介にこだわり、キャストやクライアントの信頼性も担保し続けたいと思います。さらに、非効率な業務を改善できる最新のシステムによって、人手不足にも対応できるプラットフォームを提供することで、業界に対しても良い影響を与えていきたいと考えています。期待していてください」と強調した。同社の業界全体の生産性向上を目指す挑戦は続いていく。

(※1)CTOChief Technical Officer;「最高技術責任者」を意味する言葉。企業の技術に関する活動を統括する役職。

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