2023年9月29日更新

株式会社クローネ

(北欧雑貨を中心とした雑貨等の小売、卸売)
所在地 神奈川県鎌倉市御成町3-10
代表者 澤口 亮
資本金 300万円
従業員数 11名(パート含む)
設立年 2005年
企業HP https://www.krone-kamakura.com/

SNSの活用によりお店のファンづくりの土壌を構築

ライブ配信の「クローネチャンネル」は毎週2回配信している

株式会社クローネは、北欧のインテリア雑貨を中心に、主に神奈川県鎌倉駅前の2店舗で雑貨や家具を販売している企業である。クローネ一号店は「krone-hus (クローネ・フス)」、二号店は「pieni-krone (ピエニ・クローネ)」という店名のとおり、店舗を訪れると、まるで「hus(フス)」=「家」にいるような温かみがあり、「pieni(ピエニ)」=「小さい」お店の中に所狭しと可愛らしい雑貨が並ぶ。

自社ECサイトも運営しているが、メインの客層である40代の女性は直接商品を見て購入される方が多いという。社長の澤口氏は「当店のリピーターさんは近所にお住まいの方ばかりではありません。常連のお客様は遠方からもいらっしゃいます。おそらく来店されるお客様は【買う】ということだけが目的では無いんです。それ以上に、スタッフとおしゃべりをすることも来店動機の一つになっていると思います。店頭でお話しながら商品を選ぶことを楽しんでくれています」と言う。

しかし同社は、新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言発令の影響で、深刻な打撃をうけた。店舗の休業を余儀なくされ、業績は悪化した。そこで、テレビショッピングでの販売を契機に、ライブコマースの影響力を知り、インスタグラムでのライブ配信を積極的に行うことにした。スタッフが商品を実際に手に取り紹介する動画だが、ライブで配信することにより、視聴者が疑問に感じたことをその場でコメント欄に投稿することができ、スタッフがすぐに質問に答える、といった双方向のコミュニケーションをとることができるようになった。

澤口氏は「今まで店舗でしていた接客をSNS上でやり取りをすることで、よりお客様の好みなどの情報が分かるようになりました。また、お店側も自己開示して、よりお店の理念などを知ってもらい、親近感をもってもらうことができます。だから、インスタライブによってファンと関係性を深める土壌ができたのだと思います」と語る。約3年の間、現在までに約330回も配信してきた。実際、ライブ配信を実施した後は、客単価が上がりリピート率も向上し、売り上げが伸びたそうだ。

「情緒的価値」の向上で「おうち時間をもっと楽しく」を実現

店舗では北欧雑貨が好きなスタッフが商品の説明をしてくれる

「人が買うから商品が売れる」と澤口氏。「お客様との関係性を育んで、まずは来てもらうことが第一です。来店し、買うという行動を起こすので結果的に商品が売れる。ならば、人にフォーカスしようと。商品が勝手に売れていくのではなく、人が買うから商品が売れる。ご来店いただいたら何とかなる」ということだ。「商品には『機能的価値』と『情緒的価値』があります。『機能的価値』というのは、商品の性能に対する基本的な価値。一方『情緒的価値』はその商品から受ける印象をはじめとする感情を伴う価値です。雑貨は生活必需品ではない贅沢品だからこそ、当社はより『情緒的価値』を大切にしています」と 語る。

最近では商品原価の高騰に加えて、輸入商品は円安の為替変動の影響を受けて仕入れ価格が上がった。そのため、商品の販売価格を上げざるをえない状況もあった。しかし、SNSを活用した丁寧な説明で、商品の良さだけでなく生産背景や作り手の現状がお客様に伝わり、価格転嫁に対する理解を得られた。澤口氏は「ただ食器を買うだけであれば、より安い100均で買えばいいわけです。しかし、人には感情があるので、価格だけが購入の基準にはなりえません。自分の好きなものやブランド、誰かが使っていてその影響で欲しいもの、好きなお店・応援しているお店だから買うもの、その他感情に起因する購入基準もあると思います。そこにフォーカスし、価値提供したいと思っています。スタッフの採用基準は弊社の商品が好きなことなので、スタッフもお客様も、同じようなものが好きな者同士。それが、たまたま売り手と買い手になっているだけ。なので、スタッフが好きなものを並べ、お店でお互いの好きを共有する。好きなものについて店頭やSNSで語り合う。それが私たちの考える『情緒的価値』の提供だと思います」と言う。

お店のモットーは「おうち時間をもっと楽しく」だ。「見ていて楽しい、持っていて嬉しい、使っていて幸せになる、そういうお客様の感情を大事にしたいと思っています」と澤口氏。お客様に寄り添い、良い提案をし、その結果お店での買い物時間を楽しんでもらうことが一番だ、と考えている。

お店を中心としたコミュニティの展望

社長の澤口氏

インスタグラムだけではなく、Facebookのグループ機能を利用した新たなコミュニティも通じて、お店のファンと繋がっている。現在では170人近くが登録しているこのグループでは商品や直接お店とは関係のないものに関して情報交換することもあるという。「お店対お客様の、一対複数の関係性ではなく、お客様同士もつながるようなことができれば面白いと思いました」と澤口氏。日常のお出掛け先や、食べたものに関する投稿もあるという。「好きなものが似ているから、なにげない会話でもお客様同士で共感できる部分が多いと思います。好きなものが似ているお客様同士が仲良くなり、お店を通じて親しい関係性が育める。お店とお客様の温かなコミュニティが出来たらと思っています」と語る。

毎年3月のオープン記念日に合わせて新商品の企画をするが、SNS上で直接お客様にオリジナル商品の相談をする。「提供するだけのお店の関係性から、もう一歩踏み込んで共に作り上げる関係性になり、お客様と一緒にお店づくりを楽しんで行きたい」と澤口氏は言う。今後の展開について、「何をするにしても、基本的な考えは『ファンベース』です。今後はファンの皆様を集めたリアルのイベントの定期的な開催や、ファンを巻き込んだ楽しい企画を考えていきたいです」と答えた。

店舗は、お客様と笑顔で会話をするスタッフの温かい雰囲気が立ち込める。来店するお客様も商品の説明を聞いて自然と笑顔になる。従業員の育成は「特にしないけれど『ただお客様と沢山色々なお話しをして仲良くなりなさい』とだけ言う」という澤口氏の言葉通り、楽しそうに会話をするスタッフの様子を伺うことができた。リピート率が高く常にファンを生み出すお店の秘訣が垣間見えたようである。

業種から事例を探す