2023年10月5日更新

昌和興産株式会社

(プラスチックファスナー卸売、電子部品販売)
所在地 東京都豊島区池袋2-40-12 西池袋第一生命ビル9
代表者 斎藤 隆之
資本金 3,600万円
従業員数 11名
設立年 1975年2
企業HP https://www.showakosan.com/

高利益案件へのシフトで過去最高益を更新

オンライン商談をする斎藤社長

1975年に株式会社ニフコの正規代理店(一次販売店)として創業した同社は、プラスチックファスナーや留め具などの樹脂部品を中心に、自動車向けの消耗部品等、1,000種類ほどの製品を取り扱っている。海外向けには、自動車のアフターメンテナンス用部品等の販売を行っている。

同社は、かつては大口案件かつ継続案件の獲得に注力していたが、今から78年前、大口案件だけに固執することなく、小口の高利益案件を多数成立させることに方針の転換を図った。大型案件を受注するにあたっては、有力なライバル企業が集中するほか、受注金額がある程度定められているケースが多く、効率的に利益を確保できない状況が続いていた。

当時、まだ社長に就任して間もない斎藤氏は、小口の高利益案件の獲得に向けて、新たな顧客層の開拓を積極的に進めた。以前は、展示会・商談会でのマーケティング活動や金融機関を経由したマッチング、メーカーからの移管や紹介に頼った営業活動を行っていたが、「これからの時代はインターネットが重要な営業ツールになる」と考え、社内のネット環境整備、会社HPの刷新やSEO対策の強化に取り組んだ。また、コロナ禍以降、従来の対面での営業方式からオンライン商談を中心にすることにより、営業活動の効率化を図った。こうした取り組みが功を奏し、売上高、利益率、新規の問い合わせ件数のいずれも好転したという。現在の取引先数は、斎藤氏が社長に就任した当時の420社から1.2倍の500社を超え、コロナ禍の2021年には過去最高益を更新した。

値上げの妥当性や軽減策を話し合い、販売価格の見直しを実施

原油高の影響で仕入れ価格が高騰した樹脂製部品

一方で2022年の経営状況について、斎藤氏は、「サプライチェーンの分断による世界的な部品不足の影響だけでなく、海外向けの中古車修理のアフターサービス需要が低迷する等、外部環境の影響を大きく受けた1年だった」と語る。また、近年の原材料、人件費、物流費の値上がりが、収益悪化の直接的な要因になっていたという。

「まず、弊社で取り扱う樹脂製部品は原油高の影響を受けました。さらに、各拠点の電気・光熱費、物流費の高騰の影響は想像以上に大きく、コストの上昇分を自社だけで吸収するのは現実的ではありませんでした。」このような状況を受けて、商品数を絞って値上げを実施することを決断した。同社で取り扱う約1,000アイテムのうち、昨年は80アイテムの値上げを実施し、今年はさらに300アイテムの値上げを予定している。

「中には、値上げが理由で失注してしまうケースもありますが、そこを気にしすぎても仕方がありません。あらゆるコストの上昇が続く局面では、競合他社の動向をしっかりと把握しつつ、適正な値上げを行っていく必要がある」と斎藤氏は話す。

とはいえ、いきなり一方的な値上げに踏み切るのではなく、発注ロットの増大や配送回数の減少など、値上げ以外の方法や値上額を低減できる方法について協議することにしている。

「弊社では、まず仕入先と値上げの妥当性や軽減策を話し合い、自社でできることは実施した上で、価格の上乗せの理由を販売先に丁寧に説明しています。そして、最終的には販売先に判断を委ねることにしています。値上げする前に、できることは思いつく限りやっているからこそ、明確な理由と自信をもって価格交渉ができている」と力を込める。

円安を追い風に、海外取引を強化

同社で取り扱う部品は約1,000種類に及ぶ

順調に価格転嫁ができていると思われがちだが、コストの上昇分のみを価格に転嫁させても、それに起因する発注ロットの増大による在庫費用の増大や、社内での諸経費の高騰の影響もあり、差し引きでは利益がマイナスになってしまうケースが多い。そのマイナス分を補うために、今まで事業を行ってこなかったニッチな業界への進出、新規顧客の開拓、更なる生産性向上等、自社努力の重要性も感じているという。

「最近の急速な円安の中で海外取引を増やすため、海外商社向けに当社の主力製品のPRHP上で実施しました。さらに、日本車のアフターサービス部品かつ、他メーカーが手を出しにくい案件に狙い絞ることによって、当社主導で取引することができた」と、外部環境の変化と市場のニーズを的確に捉え、新しい取り組みにも挑戦している。海外からの注文が増えた結果、取引額は昨年比で1.5倍ほど増加した。

商品価格の見直しについて、斎藤氏は、「長年の付き合いがある企業様や今後の取引のことも考えると、やり難い部分もありましたが、当社の創業以来の理念は、“係わる人すべてが幸福になる”です。仕入先様・お客様・弊社全てに利益が行き渡り、どこか1社でも不利益になってはならないという想いから覚悟を決めました」と決断に至るまでの心の内を語った。

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