2024年4月30日

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株式会社英國屋

(フルオーダースーツの製造および販売)
所在地 東京都中央区新富1-7-4 フォルテ新富町ビル2F
代表者 小林英毅(代表取締役社長)
資本金 1,800万円
従業員数 77人
設立年 1940年
企業HP https://eikokuya.co.jp/

新しい取組に積極的な小林社長

オーダースーツブランド「銀座英國屋」を手掛ける株式会社英國屋は、1940年に銀座で創業した。現在は、銀座三丁目店を中心として全国に6店舗を展開しており、政財界のリーダーたちも顧客リストに名を連ねるなど、長年積み上げてきた信頼によって銀座英国屋ブランドを磨いてきた。

近年は、人口減少や脱スーツ化という時代の潮流を汲み、これまでの多店舗展開路線を見直す中で、一部店舗の統合・閉鎖にも踏み切っているが、売り上げ高と経常利益ともに維持できている。

小林英毅氏は、3代目として社長に就任して以降、WEBサイトの刷新や無料オーダー体験などの新しい取り組みを積極的に進めてきた。

分かりやすいWEBサイトを通じて新規顧客の接点を強化

高いフィッティング技術が強み

同社のフルオーダースーツは、顧客に丁寧にヒアリングしながらデザインや素材を選んでもらい、体形にあわせて細かくフィッティングしながら仕立てていく。商品の特性上、顧客に必ず一度は店舗に足を運んでもらう必要があったため、コロナ禍における外出自粛の影響は深刻で、20204-5月期の売り上げは2019年比で80%減、通年では28%減と、厳しい経営が続いていた。最優先で集客を強化しなければならない状況の中、小林社長が目を向けたのがWEBサイトの刷新だった。小林社長は、「当社のWEBサイトはデザイン性を重視するあまり、商品の特徴や品質、オリジナリティの部分の記載が不十分だった」と当時を振り返る。最も安価な価格帯でも22万円~と、高品質・高単価なスーツを扱う同社にとって、こだわりの素材やホスピタリティのある接客、フィッテング専門の技術者がいることなどの自社の強みや、差別化ポイントのPR方法に改善の余地があると判断。社長自らが中心となってプロジェクトチームを構成し、WEBサイトの全面刷新に取り組んだ。

さらに、新規顧客への訴求力を強化する目的で、2021年から無料でオーダー体験ができるサービスを展開している。「ご来店されるお客様について分析したところ、リピート客が全体の約8割を占めていました。新規のお客様も、既存のお客様からの紹介というケースが多く、客数を伸ばすためには新しい顧客層の開拓・アプローチが課題になっていた」と小林社長。解決に向けた一手として打ち出した無料オーダー体験は、実際の購入時のように、店舗のスタッフがカウンセリングを行いながら、来店客の用途に合わせて生地選定から採寸、フィッティングの体験行う。無料体験できる内容自体は、通常の購入までのフローとほぼ変わらない。しかしながら、商品の注文を前提としてフィッティング等を行うのではなく、生地素材や仮縫いを体験し、仕立て後の見積り金額を見た上で、購入するかどうかをお客様ご自身で最終判断できる。あくまでも、「無料オーダー体験」として位置づけることによって、来店するハードルを下げることにつながったという。「当社の課題は、来店や問い合わせする際の敷居の高さにありました。決してふらっと立ち寄れるお店ではないことは理解しています。そこで、初めて来店するきっかけとなるサービスの見せ方を変えたことがよかった」と分析する。この結果、新規売上は2019年比150.6%伸び、売り上げも増加したという。

収益率向上を目指した店舗の集約化

上質さとホスピタリティを感じる銀座三丁目店の入口

コロナ禍におけるWEBサイトの全面刷新や無料体験メニュー導入の効果を最大にするため、近年は広報活動にも力を入れている。拡散力の大きい新聞やメディアへの掲載を目指して、社長自らが各記者への地道な宣伝活動や、ターゲットを絞ったSNS広告を活用するなど、あらゆる方法で周知・PRを図った。「こうした取り組みの結果、WEBサイト刷新前(2019年比)に比べて、新規顧客に対する売り上げは1.5倍まで増加しました。以前は電話予約のみ受け付けていましたが、オンライン上で予約できるようにしたこともあり、問い合わせが増えているのを実感しています。また、直近では20代~40代の比較的若いお客様が増え、顧客層の拡大にもアプローチできている」と効果の大きさを実感している。

最後に、コロナ禍で顕在化した課題に対して真摯に向き合ってきた過去を振り返りながら、同社の向かう方向性について、「これからは、売上目標を追うよりも収益率を高める経営をしたいと思っています。実際に、全国に10あった店舗も今は6店舗まで減らしていますが、ありがたいことに全体での売上はほぼ変わっていません。店舗数や事業規模を拡大するよりも大切なことがあると思いますし、私自身、間違いなく経営しやすくなると思っています」と小林社長。同時に、社員へ利益還元についても重要だと捉えており、実際に、社員の平均給与も直近2年間で1.2倍ほど増額できているという。「今は、内側に目を向けるタイミングと認識しています。得られた収益をしっかりと社員に還元し、教育や研修制度も充実させながら、働き甲斐のある企業に成長させていく。そんな好循環を作れたらいいですね」。小林社長の考える理想の企業像を目指して、次の一手を考えている。

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